6月5日に大分県社会福祉介護研修センターが開いた「ノーリフティングケアマネジメント研修」に参加しました。
その中で、ノーリフティングケアの第一人者である下元佳子さん(一般社団法人ナチュラルハートフルケアネットワーク代表理事、高知県)が、「管理者等のトップの意識改革、ノーリフティングケアの導入て順について」と題して講演しました。
以下、内容をまとめました。
ノーリフティングケア宣言を行った高知県(高知県の「ノーリフティングケア宣言」パンフレット)においても最初の一年目は「ノーリフティングケア」が何なのか?を説明することが精いっぱいの一年となりました。試行錯誤しながらノーリフティングケアの普及に取り組み、現在、ようやくどのような手順で進めていけばよいかが分かってきました。
ノーリフティングケアとは介護される側、する側双方にとって安全で安心な、抱えあげない・持ち上げない・引きずらないケアのこと。安全で安心な看護、介護を提供するには身体の間違った使い方をなくし、対象者の状態にあわせて福祉用具を有効に活用し取り組むことも必要です。ノーリフティングケアは福祉用具を使うことが目的ではなく、双方の健康的な生活を保障できるケアを実践することが目的です。人力介護とくらべて福祉用具ケアを体験するととてもリラックスできて余計な力が入らない。痛くないということがよくわかります。
現在、高知県においてはノーリフティングケアは最低限やらないといけないことになっています。
ノーリフティングケアを導入するにあたり、最も大事なことは「体制づくりのために実施すべきこと」です。ここをしっかりとしていくためには組織の中で体制構築に長けた管理職、リーダー層が職員のみなさんに対して、施設内でのノーリフティングケアについての方針を示していくことが大切です。
福祉用具を導入するだけでは使用しない職員さんもでてきますのでその場合、腰痛が減らない、ノーリフティングケアが浸透しないということになってきます。
何から手を付けたらいいかわかりませんという方は、まず何をすべきか?ということを考えるとよいです。まず、「従来のケアが間違っている」という認識を持って「間違ったケアをやめる」ということから始めると、スムーズに意識改革ができるのではないでしょうか。
下元さんは、今後の人口減少社会でどのように介護サービスを持続していくかについても言及しました。
介護業界の「体がきつい」「給料が低い」というネガティブイメージを変えていくことに取り組まないと、人材採用は現状以上に困難になります。
そうなった場合、経験年数などに関わらず、多くの職員が一定のクオリティのケアを提供できるようになることが重要です。
身体介護技術研修に特化すると、一部の職員のみがレベルアップするばかりで全体の質の向上にならない、ということが、介護技術研修を続けた結果わかりました。
福祉用具を使用したケアであれば、経験年数と関係なく一定のハイレベルなケアが可能になります。
そもそも体を密接させて介助しなければならない介護現場・・・若い女性の場合は働きたくないと思うのが当然とも思います。
介護される側にとっても心地よく、介護する側にも負担が少ないケア。北欧では当たり前なこと。オーストラリアでは13年前にヴィクトリア州の看護連盟が立ち上がり文化を変えることに成功しています(ノーリフティングポリシー)。
今後人口減少していく日本においては、ノーリフティングケアが当たり前な環境になっていかなければ、介護業界全体に明るい未来は描くことができないと思います。ノーリフティングケアが当たり前になることによって、希望をもって活き活きと働く職員さんが増えて、介護される人にも安全で安心なケアを提供できるようになるのではないかとあらためて感じました。